第5回 勘定科目

前回までに、仕訳がどの様な流れで貸借対照表、損益計算書になっていくかを見ました。

では、今回から仕訳で一般的によく使われる勘定科目を、「資産」「負債」「資本」「収益」「費用」の項目別に説明していきます。

 

科目の選択と継続性

目的
ここで学んでいくことは上場会社の様な社外向けに公表するための処理ではなく、個人や中小零細企業のための処理が前提です。
企業会計原則から外れることもありますが、実務での例も入れていきたいと思います。

なので、重要な事は

  • 利益を正しく計算する
  • 経営判断が正確にできる

 利益を正しく計算する
  前回に仕訳をしたケーキのショーケースですが、「工具器具備品」(資産科目)を「消耗品費」(費用科目)として処理をしてしまうと50万円が一気に費用となってしまい利益が大きく変わってしまいます。
このように科目を間違えてしまうと、利益が違ってしまいますので特に注意が必要です。

 経営判断が正確にできる
  領収書などの事務用品を購入して「事務用品費」としましたが、これを購入する度に「消耗品費」や「雑費」など違う科目として処理してしまったらどうなるでしょう?
どれも費用の科目なので利益は変わりませんが、損益計算書を作成した時に科目ごとの内容や、会計期間ごとの経費の増減が正しく判断できなくなってしまいます。

分り易く柔軟に

実務では、どの勘定科目で処理するかは同じ費用でも違う場合があります。例えば、銀行の振込手数料を「支払手数料」勘定で処理する会社も有れば、「雑費」として処理している会社もあるでしょう。
この辺りは、社内で統一されて継続して処理されていれば問題はないでしょう。私が勤務していた事務所では、車両関係の経費だけを別に集計したかったので「車両経費」という科目を作って使っていました。
ガソリン代は燃料費、保険は損害保険料、税金は租税公課などの科目を利用する場合も多いと思いますが、経営判断がしやすいように独自の科目を作って利用することもあります。その辺りは柔軟で良いと思います。
検定試験では、そうはいきませんが。

 

では、主な科目を順にみていきます。
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資産科目

資産は、流動資産と固定資産に分類されます。

流動資産

現金

 

文字通りレジや金庫の中に入っている、お札や硬貨の残高です。小切手、商品券などの金券も現金として処理します。
会社のよっては、金庫とレジや支払いのために別に保管している少額な現金を分類するために「小口現金」という科目を設けることもあります。

商品1万円を現金で販売した。
現金10,000/売上高10,000

預金

預金には、当座預金、普通預金、定期預金、定期積金など多くの種類があります。

 

・当座預金

支払に小切手を振出す会社で利用されます。(融資目的に開設されることもありますが)
預金通帳と同じ様に、当座の取引明細書が毎月発行されます。この残高と帳簿残高が合わない場合がありますので、その点がちょっと他の預金と異なります。
その処理は、また別の機会に説明します。
また、当座預金はマイナスになる事もある口座です。決算時にマイナスになっていれば、短期借入金に振り替えることが一般的ですが、残高証明書に合わせてそのまま処理する会社もある様です。

商品10万円を仕入れて、小切手を振出して支払った。
仕入高100,000/当座預金100,000

・普通預金

個人の方が利用する預金と同じです。通帳の動き通りに帳簿を作成します。

普通預金から電気代2万円が引き落とされた。
水道光熱費20,000/普通預金20,000

・定期預金、定期積金

これも個人の預金と同じです。定期積金の利息は、「給付補填金」と呼ばれます。

定期積金が10万円が満期になり、利息100円と共に定期預金として預け入れた。
定期預金100,100/定期積金100,000
        /給付補填金100 
 
※実務では利息から税金が差し引かれる仕訳をします。

最近は外貨による預金が手軽にできるようになりましたが、会社の場合は外貨預金残高を決算時のレートで換算する処理を行いますので、注意が必要です。

 

受取手形

売上などの代金を手形で受け取った場合に使われます。
いつまでに代金等の支払いをしますと約束をした証書です。小切手は、受け取って銀行へ持っていけば2日程度で預金に入金がされますが、手形はその約束期日までは手形割引等の処理をしないと、現金化することができません。
※割引手形、裏書手形については負債の項目で説明します。

商品50万円を販売して、代金を手形で受け取った。
受取手形500,000/売上高500,000

 

売掛金

後日払い売上の回収していない残高です。
会社間の取引では、その都度支払いをせず月末等の締め日までの売上をまとめて請求書を発行して、後日支払いがされる事がよくあります。売上は商品を納品の都度計上しますので、まだ代金をもらってない分を売掛金として処理します。

商品10万円を販売して、代金は翌月払いとした。
売掛金100,000/売上高100,000

 

未収入金

売上以外で、まだ回収していない金額。

外注費5万円を重複して支払、まだ返金がされていない。
未収入金50,000/外注費50,000

 

前払費用

期日前の期間に対応する費用。
借入保証金を返済期間の10年分を一度に払ったような場合は、来期以降分が前払費用となります。

※原則は1年以内に期日が到来するかどうかで区分しますが、実務では区分せず全て前払費用とすることもあります。
上記の保証金の場合は、来期の1年分は流動資産、それ以外は固定資産となります。

5年の長期借入をして、その保証金3万円を普通預金から支払った。(今期は6カ月分)
支払手数料 3,000/普通預金30,000
前払費用 27,000/

 

前払金

継続して支払う費用以外の前払い金額。
外注先への前払いや、機械など資産を買う場合の前払いなど。
前払い費用との区別が難しいですね。実務では、どちらか一方に統一して使っている場合もあります。

物置の建築代金のうち30万円を小切手を振り出して前払いした。
前払金300,000/当座預金300,000

 

立替金

取引先や従業員などへの一時的な立替払い金など。
雇用保険の従業員負担分の概算払い金額。

今年度の雇用保険11万円を現金で支払った。そのうち4万円は従業員負担分。
立替金   40,000/現金110,000
法定福利費70,000/

 

仮払金

まだ処理内容が決まっていない金額。
出張旅費の前渡しなど。

出張旅費2万円を仮払として現金で支給した。
仮払金20,000/現金20,000

 

短期貸付金

従業員等に貸し付けた金額。
これも、長期短期の区分は1年以内に期日が到来するものを短期とします。

従業員に半年後の返済で20万円の貸付を現金で行った。
短期貸付金200,000/現金200,000

 

商品

第3回で、残っているクッキーの仕訳をしましたがこれが商品です。
仕入れた商品の場合は、仕入れ価格の金額です。

月末に商品の棚卸を行った。在庫金額30万円
商品300,000/期末商品棚卸高300,000

 

下が、会計ソフト「会計王」で規定設定されている流動資産科目です。
上記で説明した以外の科目もありますが、徐々に説明を加えていきたいと思います。

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次回は、固定資産の勘定科目をみていきます。